明代の正統、景泰、天順の三代(1436〜1464年)は、二度の兄弟間の帝位継承による政治的な混乱を生み出した。この時期の官窯製品は銘款を記さず、文献史料も不足しており、重要な民窯製品もまた年代特定の根拠も乏しい。そのため、この三代の官窯磁器の製造状況は比較的不明瞭で、陶磁史家はこの時期を「空白期」または「暗黒期」と呼んでいる。1988年と2014年の景徳鎮の明代御器廠旧址での二度の考古学的発掘により、「空白期」の謎が徐々に解明されつつある。この時期の景徳鎮御器廠は、生産を停止していなかっただけでなく、宮廷や官府向けに多彩で高品質な官窯磁器が大量に生産されていたことが明らかになった。これらの多くの器物は、宣徳年間の製品の系譜を引き継ぎ、さらに多くの製品には成化年間の製品様式との密接な関連もうかがえる。全体として、この時期の官窯磁器の多様性と豊かさは、前代や後代にも引けを取らず、明初以来の景徳鎮官窯磁器の生産の連続性を示している。かつて「空白期」と呼ばれたこの時期は、他の時期と同様に、正常で多彩な磁器生産が行われていたと時代であったと見るべきである。さらに、この時期の民窯製品には、文人たちが好んだ文学的な題材がしばしば見られ、製作技術も官窯磁器に匹敵する精巧さを持ったものも見られる。
今回の展覧会では、上海博物館コレクションから、この「空白期」の景徳鎮の官窯と民窯の磁器計14点厳選し、出品している。これらの作品の展示と本講演を通じて、正統、景泰、天順という特殊な時期の景徳鎮磁器の発展とその様式的特徴について紹介する。